2008年3月14日金曜日

関門合同勉強合宿

長門湯本温泉にて,北九州の弁護士の方々と下関の弁護士とで勉強合宿をしました。

今年で8回目です。
今年のテーマは

1 関門地区での少年事件の弁護人の複数選任問題&管轄問題

2 生活保護不支給問題(北九州での餓死事件3件と検証委員会の活動について)

3 マンション管理における法律問題(マンション管理組合の規約の問題点,区分所有権法の不備等)

4 労働契約法


でした。どれもこれも充実した講義でした。講師の方々とスムーズな進行を実現してくださった幹事の先生方,本当にありがとうございました。

1について少々触れてみます。昨年1月に発生したいわゆる門司港援交狩り事件で,少年審判により検察官送致処分になった少年たちは

 北九州で逮捕勾留→福岡家裁小倉支部に送致→山口家裁下関支部に移送・少年審判(身柄は北九州市の各警察署から山口市の山口少年鑑別所に)→山口地検下関支部に逆送→福岡地裁小倉支部に起訴(身柄は山口市から北九州市へ)

 という手続の流れをたどりました。

 難事件であったため北九州で複数の弁護人が必要だと,国選弁護人のほかに法テラスの協力の↓下,法律扶助による弁護人を付けたところ,裁判所により先に選任されていた国選弁護人が解任されるという問題が発生しました。


 昨年7月に最高裁が各地の裁判所に国選弁護人を複数選任する場合の指針を通達してからは,弁護人を複数選任することは認められやすくなりましたが,わずか3か月まえにはこのような妨害があったのです。

 また,少年審判が行われる裁判所について,北九州と下関の弁護士,弁護士会,検察官らから小倉で行うようにとの強い要望が出されたものの,下関で少年審判が行われることとなりました。そのために少年たちの身柄は北九州から山口市に移され,北九州で選任されていた被疑者弁護人の先生方はひきつづき付添人(家裁送致後は「付添人」となります)として活動することが困難になり,一部の少年たちの付添人は下関市や山口市の弁護士らが新たに担当しました。

 しかし,検察官送致処分(いわゆる逆送)になった少年の刑事裁判が,どこで行われるのかは最初からわからず,下関か山口で行われるとの予想に反し,福岡地裁小倉支部で行われることとなりました。このとき,付添人となった下関市の弁護士が少年の国選被告人弁護人に選任してもらうよう裁判所にお願いをしましたが,拒否されました。

 このような経過をたどり,少年たちは裁判所と身柄拘束地を転々とさせられ,そばにつく弁護士は何人も交代せざるをえませんでした。弁護・付添の一貫性の点からも,少年との信頼関係の点からも,今後このようなことを繰り返すわけにはいきません。

 関門海峡には,福岡高裁管内と広島高裁管内の壁が存在します。

 しかし関門地域では,管轄の壁とは関係なく,人的・経済的な深い交流がなされています。

 管轄と検察庁や裁判所の権限。

 形式的に運用するか,実情に沿って運用するかは,実務担当者の知恵と工夫と勇気次第です。関門地域での法曹三者の協議会を持つなど,まずはコミュニケーションを図る必要があります。今回の勉強会ではそんな議論がなされました。