2009年11月25日水曜日

司法修習生の「貸与制」

司法修習生はこれまで準公務員として給与をいただいていましたが
来年の平成22年からは「貸与制」になります。

同業者のあちらこちらで、問題点が指摘されています。
平成21年度中国地方弁護士大会でも議論されました。
自分の考えを整理するためにメモを作ってみました。

○保証人または機関保証が必要

→保証人になってくれる人がいないと司法修習生になれない?
→機関保証をつけるための保証料を払えないと司法修習生になれない?
→弁護士になっても、機関保証をおこなった団体とは常に利益相反が生じてしまい、債務整理などの仕事ができないのでは?


修習資金貸与制の施行に伴う整備の概要(案)
http://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/sihosyusyu/iikai_14_41.html
3 保証人(法第67条の2第5項関係)
(1) 修習資金の貸与を受けようとする者は,連帯保証人として自然人2人(修習資金の貸与を受けようとする者に父又は母があるときは,うち1人はその父又は母)を立てなければならないものとする。

(2) (1)とは別に,例えば,独立行政法人日本学生支援機構奨学金のような機関保証を選択することができるようにすることが望ましい。


○国家公務員共済に入れない
→国民年金、国民健康保険を自分で負担するとなると、「基本額 23万円程度」の実質は20万円を切るのでは
 → 地方修習に赴任するための転居費用は捻出できない。地方修習の回避者が増えないか。

○修習生期間中は「収入」がない
→現在、未曾有の就職難で、修習終了後すぐに独立する方も増えています。しかし、独立するにも先立つ資金が必要ですが、ロースクール奨学金約300~400万円・修習生貸与金約300万円と、すでに多額の債務を負担している新人弁護士に、金融機関はどれだけの信用をあたえてくれるものなのでしょうか。
 また、「収入」がないということは、所得証明がないということです。源泉徴収票も市県民税所得証明書も出ません。金融機関から借入をするにあたり、資力を証明することができません。


正直、司法改革が行われていたころは、弁護士の平均所得もある程度は確保されていたでしょうが
現在の状況で、これだけ多額の金額を返すことができるとは思えません。
親世代の財産が、国や大学に吸い取られて終わりという気がしてなりません。


資力も経験もない若手に負担が大きすぎる、このような制度設計には最初から無理があります。
今後も優秀な人材に法曹界をめざしてほしいのに、人材が他分野に流れるのではないでしょうか。
もし私が今15歳若ければ、法曹界をめざすことができたかどうか。

なお、弁護士になったら食べられないかもしれないという状況は、裁判官や検察官にとって、「自由にやめられない」状況を生み出しているのであり、司法の独立性や裁判官・裁判所の独立性に対して、経済面の障害を与えかねない…と思っています。